「 京都を描く 」
油彩 F4 「 枝垂桜と塔 」
芸大在学中、私はパリと京都の風景が好きで、とりわけ日本庭園の持つ
バランスの妙味、歳月の成せる深い味わいの色彩に惹かれていた。そのた
めアルバイトで旅費を作っては、せっせと京都へ通うこととなったが、当然の
こと好きであるから描ける訳ではない。在学中、一枚とて満足の行く作品は
描けなかった。そこには表現に就いての迷いがあった。そしてその迷いは、
その後30年近くも続いたのだった。
ようやく画家としてスタートして以来、その大半のテーマがパリであったの
は、パリが鮮やかな色彩を使いたい私の希望(絶対条件)に容易に応えてく
れるテーマであったからだ。それは時にカフェの赤い日除けであり、アパート
メントの青い扉であり、黄色いファンシーショップの壁であった。加えて奥行き
のある建物は、やわらかな光と微妙な影の表情に富んでいた。比較して京都
の街並みは無彩色で平面的な世界だ。私の使いたい目の覚めるような“鮮や
かな色彩”と、歴史の刻まれた“鮮やかな色彩”と“さびの色彩”を、どのように
作品の中で両立し得るか?そのことが私の長い間の迷い、課題であった。
しかし最近になってそろそろ京都をもう一度描いてみよう、という気持ちが自
然に芽生えて来た。思えばパリも京都も、実はどちらも緻密に計算されて造ら
れた人工美の都市であり、共通点も多い。以前個展の会場を訪れた方から、
「私は京都の生まれですが、先生の描かれるパリの空気は、京都の空気に似
ていますね。」と言われ、妙に納得してしまったことを思い出した。“私のパリ”
を描くスタイルが確立された今、パリを描くのと同じフィルターを通し“私の京都”
が描けないはずはない、と、そのようにさえ思えて来た.現実からほんの少し
遊離すれば色彩はもっと自由になる。また“鮮やかな色彩”と“さびの色彩”と
の構成も、色面の大きさ、配置の工夫で、絶妙の組み合わせが生み出せない
訳でもない。
作品に関するお問い合わせは 5ku55rbma.biglobe.ne.jp 日下部 和俊
8月7日~京都大丸美術画廊にて個展開催











